今回は、嚥下障害(えんげしょうがい)の原因は?高齢者と若年者の違いと脳のメカニズムを解説します(^ ^)
嚥下障害は、今や高齢になると当たり前に起こる障害と言っても過言ではありません。
令和元年(2019年)の死亡原因の中で、誤嚥性肺炎は2.9%で6位となっています。高齢者に限った場合、肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者で、70歳以上の高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥性肺炎です。
私たちは、食事をする際に無意識にとても複雑な認知・運動を行っています。その脳のメカニズムも解説していきますね!
嚥下障害の原因は?高齢者と若年者の違い
- 食道や胃などの部位に異常が起きたり、筋肉や神経に異常があると発症する
- 不安な場合は、病院で診察を受けるのがおすすめ
- リハビリや手術で治すことができる
- 日頃から口腔ケア・歯磨きを行うことが重要
大まかには、以下のように分けられます▼▼

高齢者・若年の嚥下障害の原因と対応
脳卒中が約40%!?
摂食嚥下(えんげ)障害の原因疾患の約40%が脳卒中であるといわれています。
急性期には約30%の患者さんに誤嚥が認められ、慢性期まで誤嚥が残存する患者さんは全体の約5%程度といわれています。
5%というと少ない印象を受けるかもしれませんが、日本では年間約40万人の脳卒中の患者さんが発症していると推計されます。なんと!毎年約2万人の摂食嚥下障害の患者さんが新たに生じていることになるんです。
【対応】
専門職(言語聴覚士(げんごちょうかくし)、歯科医師、看護師など)が以下の指導・訓練を行います。
- 食事の形態
- 食べ方
- 介助の方法
- 食べる動きを促すための訓練
例)




※その際は、通院している神経内科、脳神経外科など他科と連携し、脳病変の状態や全身状態と食べる機能との関係を把握しつつ治療を進めます。
〈参考〉
日本脳卒中協会 HP:脳卒中と摂食・嚥下(えんげ)障害
http://www.jsa-web.org/jsanews/jn7/jn7a.html
最近注目されている!サルコペニア・フレイルって!?
高齢化が進む日本で、75歳以上の後期高齢者が要介護状態となる原因に、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)や転倒、サルコペニア、尿失禁、フレイルがあげられます。
特に嚥下障害を起こしっやすいとされるサルコペニア(筋肉減少症とも呼ばれます)とフレイル。低栄養との関連が強く、咀嚼(そしゃく)や嚥下に必要な筋肉が失われてしまう状態です。予防がとても重要な病気です。
舌での押しつぶし、咀嚼力の低下や食物を飲み込みやすい形にまとめる機能の低下(食塊形成不全)、歯が弱る、残存歯数、義歯の不具合などにより起こります。
【対応】
- 筋肉に適度に負荷のかかる運動
- バランスの取れた食事
- 感染症予防


尿路感染や脱水による意識障害での嚥下障害
高齢者は加齢による様々な疾患のため尿路の防御機能が低下していて尿路感染症を起こしやすいうえ、再発を繰り返し治りにくい特徴があります。
高齢になると基礎代謝量が減少し、代謝によって生じる水分(代謝水)が減ります。さらに年齢を重ねるごとに腎機能も低下し、老廃物を排泄するために尿量が多くなるため、体内の水分がより失われやすくなります。
尿路感染や脱水の症状に意識障害があり、ぼーっとした状態で食事を取り、タイミングのズレやきちんとむせる事ができづらいため嚥下障害の原因になるのです。
【対応】

- 水分摂取の促し
- 体動・体位変換の促し
- 便通を整える
- 陰部洗浄
- 清潔操作、手洗い、消毒等
- 混濁や発熱時は増悪を考えて早めに受診する。
免疫機能は60歳を超えると20代のおよそ半分以下になるといわれています。
肺炎を起こしてしまったら・・・


若年の嚥下障害って!?
嚥下障害は、高齢者だけではないんですね。最近は、30代で誤嚥性肺炎で入院する人が出ているそうなんです。
「よくムセル」「薬が飲みにくい」「声がかすれる」などの自覚は、30代、40代の人にもあるはずだ。すでにのどの衰え、すなわち老化が始まっているからなんですね!
こちらの記事で、トレーニング方法などを解説・紹介しているので参照ください▼

きちんと正しい知識で対応することで、早期治療と完治が可能です。また、予防が一番重要です!周りに気になる方がいれば、受診を進めてみてください( T_T)\(^-^ )
嚥下障害の原因は?脳のメカニズムを解説
嚥下に関する神経は、Ⅴ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ、Ⅻ!
脳神経は脳から出る末梢神経で、12対あります。
I(1)~XII(12)までの脳神経は脳とつながり、頭蓋底の孔を通っています。
嚥下に関する神経は、Ⅴ三叉神経、Ⅶ顔面神経、Ⅸ舌咽神経、Ⅹ迷走神経、Ⅻ舌下神経です。


脳神経の覚え方
I 嗅いで
II 視る
III 動く
IV 車の
V 三又の
VI 外向く
VII 顔の
VIII 聴く
IX 舌咽
X 迷う
XI 副
XII 舌下
摂食嚥下のメカニズム 嚥下5期モデル
摂食嚥下運動は、中枢(大脳皮質)から下位の嚥下中枢・咀嚼中枢、末梢神経(脳幹からでる脳神経)へ刺激伝達により咀嚼・嚥下・上肢の諸筋肉を動かす巧妙な統合・協調作用力
むずかしい言い回しですね。こちらをご覧ください。

図のように、食物は口から入って食道に入るまで一連の流れで移送されていきます。
嚥下障害は、それらの神経系に何らかの問題が生じたときに発症します。5期モデルのどの過程で影響があるのか、嚥下の状態を理解しておくことが必要なのですね。
- 先行期:口に入れるまでの段階で、何をどのように食べるか、視覚、聴覚、触覚などにより食べ物を認知し、判断する時期。
- 準備期:食物を口に取り込み、咀嚼(そしゃく)して食塊(しょっかい)を作り、舌の真ん中に配置し飲み込みの準備をする時期。食物は、唇を通して口の中に取り込まれ、咀嚼し、舌を使い唾液と混ぜ合わせ一口飲み込める量にします。
- 口腔期:食物を咽頭(いんとう)と呼ばれる喉の奥へ送り込む時期。準備期と同様に口唇が閉鎖と鼻咽腔(びいんくう)が閉鎖した状態でないと嚥下と呼吸のタイミングがあわず、嚥下反射(えんげはんしゃ)が起きにくくなる。
- 咽頭期:嚥下反射により、食塊(しょっかい)を一瞬(0.5秒)で咽頭(いんとう)から食道へ送る時期。嚥下時には、多くの嚥下筋群(えんげきんぐん)とそれを支配する脳神経(三叉神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、舌下神経など)が協調して働く。
- 食道期:食塊が重力や蠕動運動(ぜんどううんどう)により胃に運ばれる時期。食道の入口部分は閉鎖し逆流を防止します。食塊が食道を通過するのは、物性により異なるが液体では3秒、固形物では8秒とされています。
長くなってしまったので、それぞれの期が傷害された時の対応は、また違う記事で書きます!
まとめ
- 高齢者の嚥下障害は40%が脳卒中!低栄養や脱水にも注意が必要!
- 若年性の嚥下障害は、生まれた時の口や舌に異常があったり食べにくい形をしている
- 脳のメカニズムは、嚥下に関わる脳神経は三叉神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、舌下神経!5期モデルという飲み込みの時の流れがある
今回は、嚥下障害の原因は?高齢者と若年者の違いと脳のメカニズムを解説しました(^ ^)
嚥下障害は、今や高齢になると当たり前に起こる障害と言っても過言ではありません。
体の状態や脳と深い関わりのある飲み込み運動をこれからも一緒に学んでいきましょう\(^-^ )
