今回は、高齢者の肺炎 症状の特徴は?「熱はでない?水がたまる⁈」主な治療法とは?
高齢者の肺炎は、前回紹介した肺炎の症状と違った特徴があるんです。高齢になれば具合の悪いところがいくつもあったりします。
高齢者の肺炎症状の特徴は?「熱はでない?水がたまる⁈」少しでもいつもと具合が違うと思ったら、放置せずに主治医に相談しましょう!
そして、主な治療法とは?の疑問を解決していきます。
では、始めていきますね!
高齢者の肺炎症状の特徴は?
まず、高齢者医療の特徴は?
- 主訴がいくつもある
- 主訴の表現もずばりといかない、 うまく解釈す
る必要がある - 不特定の訴えが多い
体調に、今までと違う症状があれば気をつけなければいけません。
- いつもと話し方が違う
- 尿を漏らした
- 歩き方が遅くなった
- 食事を食べなくなったなど
一般的な高齢者の特徴があります
- 病気にかかりやすくなる
- 環境の変化に適応する能力が低下する▼
- 体温調節がしにくくなる
- 発熱、下痢、嘔吐などにより容易に脱水症状を起こす
- 血糖値を一定に維持する能力の低下し、低血糖を起こしやすくなる
- 加齢とともに血圧が上昇する傾向にある
高齢者の肺炎の症状の特徴
- 肺炎の一般的な症状といわれる高熱・咳・白血球増多は、
高齢者の場合50~60%しかみられないといわれている - 視力障害、聴力障害などが現れる
- 病気により寝たきりの時間が長くなると、、関節が硬くなったり、床ずれ
の発症、血栓ができて脳梗塞発症や、尿路感染などになる確率が高い - ただなんとなくだるい(倦怠感)といった程度の症状にすぎないことも少なくない
いつもとは、少し様子が違うけれど大したことがないためそのまま放置することが多くあり、発見されたときにはすでに重症化しているケースが多い
こうした高齢者の特徴を、本人はもちろんですが家族も知っておき、軽い風邪のような症状であっても、長引くときは早めに受診し、肺炎を起こしていないかどうかの検査を受けることが大切です。
高齢者にみられる肺炎は、誤嚥(ごえん)によるものが多い!
嚥下性肺炎は、高齢者肺炎の 40 〜90%であり、誤嚥の原因は脳機能の低下が一つの原因とされています。また、肺炎の重症化は低栄養の問題となります。
飲み込む機能が低下するため、食べ物や飲み物が食道ではなく気管に入ってしまい、むせることが多くなります。

そのとき、飲食物や唾液などに含まれている細菌が気管から肺に入り込むと、肺炎を発症しやすくなります(誤嚥性肺炎)。
こちらの記事で、嚥下機能のリハビリにおすすめの方法を載せているので参考にしてみてくださいね!

「熱はでない?水がたまる⁈」主な治療法とは?
熱はでない?
- 高齢者は、筋肉量も少なく、一般的に平熱は低めで熱が出にくくなります。 また、通常であれば高熱が出るような病気でも、体温調節が適切に働かず熱が出ない場合もあります。
※熱だけを目安にせず、全身の状態を観察して変化があれば病院を受診しましょう。
水がたまる⁈
- こちらの症状は、肺水腫という肺に水がたまった状態のことです。
- 肺には、肺胞(はいほう)と呼ばれる、酸素と二酸化炭素を交換するフィルターの役割をする小さな袋状の構造物があります。この肺胞の周りには多くの網目状の毛細血管が取り巻いていて、空気と血液との間で酸素と二酸化炭素が効率よく交換されるような仕組みになっています。
- 肺水腫は、この毛細血管から血液の液体成分が肺胞内へ滲み出した状態です。肺胞の中に液体成分がたまるため、肺で酸素を取り込む際の効率が低下し、重症化すると呼吸不全に陥ることもあります。

高齢者の肺炎の主な治療法とは?
日本化学療法学会雑誌第67巻第1号 高齢者肺炎の治療と予防 茂呂先生は、以下のようにおっしゃっています。
重症度分類で重症度が高くないと判定され,さらに耐性菌リスクが低い症例の場合,(抗緑膿菌活性 をもつ)広域抗菌薬は必ずしも必要とされない。原 因菌として肺炎球菌,MSSA,インフルエンザ菌, 口腔内レンサ球菌,クレブシエラ属菌[非基質拡張 型 β ―ラ ク タ マ ー ゼ(Extended spectrum β – lactamase:ESBL)産生菌],モラクセラ・カタラー リスなどの関与を念頭に,エンピリック治療1)として抗菌薬の第 3 世代セフェム系薬の ceftriaxone(CTRX),cefotaxime(CTX),ペニシリン系薬の sulbactam/ampicillin(SBT/ABPC)が推奨される(escalation 治 療)。
1)エンピリックセラピー:経験的治療。治療者が、医学的に厳密な根拠というよりは自分の経験を基準にして、治療を行うこと。とくに感染症が疑われる場合で、原因菌を特定する以前の初期治療において、医師が抗菌薬を投与すること。
細菌性肺炎や、マイコプラズマなどによる非定型肺炎の治療薬には、抗生物質が処方されます。一方、ウイルスによる肺炎の場合には、抗ウイルス剤が治療薬として処方されます。
※抗生物質は、細菌に対して効果を発揮しますが、ウイルスに対しては無効です。それぞれが逆の治療薬を服用しても、効果が得られません。
他にも・・・対症療法(症状に対する限定的な治療法)として、痰を出しやすくする薬、せき止め、解熱剤などが処方されます。
また、
肺炎を発症すると、体の中では多くのエネルギーを使い、体を元に戻そうとしています。こういう時は、しっかりと安静を維持し、体を十分に休息させることが必要です。
歩き回ったりせず、体を温めながらゆっくりと休養しましょう!そして、消化が良く栄養価の高いものを食べ、まめに水分を補給します。代謝を良くするだけではなく、脱水症状を予防することが重要です。
誤嚥のリスクが存在する場合や,肺膿瘍/肺化 膿症の病態では,嫌気性菌感染の関与を念頭に抗菌 薬を選択する必要があり,SBT/ABPC であれば対応可能であるが,CTRX あるいは CTX は嫌気性菌 への抗菌活性が不十分であるため,抗菌薬としてclindamycin (CLDM)や metronidazole(MNZ)の併用を考慮 する。
参考:日本化学療法学会雑誌第67巻第1号 高齢者肺炎の治療と予防 茂呂先生
【誤嚥性肺炎の治療】
抗菌薬を用いた薬物療法が基本です。呼吸状態や全身状態が不良な場合は入院して治療を行います。同時に口腔ケアの徹底、嚥下指導も重要です。
また、嚥下機能に悪影響を及ぼす薬物を内服していないかチェックし、その上で、嚥下反射を改善する効果が確認されているACE阻害薬(血圧を上げる作用のあるホルモンを作るのに必要なアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することによって血圧を下げる薬)などの適応を検討することがあります。
まとめ
今回は、高齢者の肺炎 症状の特徴は?「熱はでない?水がたまる⁈」主な治療法とは?
高齢者は、主訴がいくつもある、主訴の表現もずばりといかない、 うまく解釈す
る必要がある、不特定の訴えが多い、後期高齢者になると平均8つ以上の訴えがある!ということを前提において肺炎の症状を観察しましょう。
高齢者の肺炎症状の特徴は?「熱はでない?水がたまる⁈」少しでもいつもと具合が違うと思ったら、放置せずに主治医に相談しましょう!
