今回は、失語症の回復期間はどれくらいなのか。失語症の回復過程を回復曲線と回復率を使って解説します。
身体機能と違い、言語機能は発症から数年が経過した後でも緩やかな改善が見込めると言われています。
ただ、急速な回復がみられる期間に集中的にリハビリを行うことでより機能の改善が期待できるんですね。
短期集中は、結構大事です。
では、始めていきます。

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失語症の回復期間は?
リハビリは、急性期(発症後2週まで)・回復期(発症後3か月まで)・維持期(それ以降)の3段階に分けることができ、早い段階からケアすることで回復率が高まります。
失語症は、脳卒中発症後 2 週間の間にもっとも著明な改善が見られ、また、おおよそ12か月で急性期で認められた失語症の40%は改善するとされる。また、軽 度失語症は発症後 2 週間、中等度失語症は 6 週間、重度失語症は10週間が最も回復するとされている。
参照:脳卒中治療ガイドライン2009
失語症の予後に関連する要因
- 疾患要因
- 生物学的要因
- 社会的要因
- 病巣が狭い範囲に限局していると、回復が期待できるといわれています。特に中心溝(ちゅうしんこう)の前方や基底核(きていかく)に限局した病巣例では、発症から2年程度までの比較的早期に回復する症例が多いことが知られています。
- 発症時の年齢が40歳未満であれば、広範囲にわたる病巣例でも長期間で、中等度ないし軽度まで回復する可能性があることが知られています。
- 訓練を長期間実施することにより、機能回復が認められる症例が存在します。反対に、訓練を実施しないことにより、回復した機能が低下する症例が存在することが報告されています。
中川良尚先生らによると、失語症の予後予測については「少なくとも2年以上の長期にわたって回復を試みる努力が重要かつ必要」と報告があります。
失語症の回復のメカニズム
- 損傷された機能領域(脳の領域)の回復
- 残存領域(損傷を受けていない領域)における機能の再構成
- 対側半球(たいそくはんきゅう)による代償機能(だいしょうきのう)あるいは対側皮質の賦活(たいそくひしつのふかつ)などが考えられている
急性期に聴く能力のリハビリを行なっても理解を改善させることができないけれど、亜急性期には、リハビリの効果が出易くなったり、慢性期にはさらに応用ができるようになったりします。このことは、発症からの時期によって失語症の回復しやすい機能が違うのではないかという可能性をうかがわせる現象です。
失語症について詳しくはこちら→一般社団法人 日本高次脳機能障害学会(旧 日本失語症学会)
回復過程を回復曲線と回復率を使って解説します
失語症の回復曲線

参照:臨床リハ21巻1号 2012年1月15日 p.24-34 「失語症のみかた」
参考:前島先生らJpn J Rehabil Med 2016;53:273-279
脳卒中による失語症は,発症から数カ月の間でかなりの自然回復がみられます。
発症から数日~数週間にみられる中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい)の回復過程には、脳浮腫(のうふしゅ)が改善する、新しい血管が作られる、血腫(けっしゅ)の吸収、補助する血管の発達などが関与し、損傷組織の修復がすすむと考えられます。
急性期に失われた神経機能を再生させる方法としては、さまざまな内科的治療や外科的アプ ローチが行われますが、これらは生き残っている神経細胞の壊死(えし)を防ぎ、機能を 戻そうという試みです。失われた中枢神経は慢性期には再生しにくくなりますが、症例によっては緩やかな回復が起こるものもあります。
失語症の改善曲線 参照:東京都神経科学総合研究所
■発症から間もない時期ほど改善(○)が大きく、時間がたつにつれて改善が緩やかになる。コミュニケーションの量などの環境的要因も改善に影響する。
失語症の回復率
脳血管疾患が原因で生じる失語症の場合、約12ヶ月で40%は改善すると言われており、軽症であれば発病後2週間、重症であれば10週間が最も回復率が高いとされています。
この期間にリハビリ効果を最大限に引き出すことが重要です。
失語症の長期予後と発症時年齢
綿森先生らによると
失語症の回復に関しては、さまざまな要因が影響を及ぼすことが知られており、
- 原因疾患の種類
- 脳の損傷部位と損傷範囲
- 失語症のタイプ
- 年齢
- 利き手
- 言語治療のを受けているかどうか
などが主要な要因としてあげられます。
その中でも特に重要な要因は、
- 年齢
- 脳の損傷部位と損傷範囲
と範囲と言われています。
どのように予後に関係するかは、改めて記事でまとめますね\(^-^ )
まとめ
今回は、失語症の回復期間はどれくらいなのか。失語症の回復過程を回復曲線と回復率を使って解説します。
身体機能と違い、言語機能は発症から数年が経過した後でも緩やかな改善が見込めると言われています。
ただ、急速な回復がみられる期間に集中的にリハビリを行うことでより機能の改善が期待できるんですね。

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