高次脳機能障害

高次脳機能障害の回復期間や回復過程をわかりやすく解説!

今回は、高次脳機能障害の回復期間や回復過程をわかりやすく解説します。

高次脳機能とはそもそもどんなものなのか?どんなことに困ってしまうのか?

どうすれば良くなるのか?疑問が”見えない障害”だからこそ、想像しにくいと思います。

先の見えないリハビリは、心が折れやすいです。高次脳機能障害の回復期間や回復過程を学んで、見通しを立ててリハビリや日々の関わりをしていきましょう。

では、始めていきます。

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高次脳機能障害の手帳申請の仕方は?等級や診断書についてまとめました

高次脳機能障害の回復期間

まずは、評価をしてもらいましょう

高次脳機能の回復期間は、障害の重症度によっても違ってきます。また、回復しているということを具体的にイメージするためにもまずは、検査を受けることをお勧めします。

一般的には、発症後3〜6ヶ月間が急速な回復が見込まれる時期と言われています。そのため、回復期リハビリテーション病院は最大180日の入院期間を設けているのです。

高次脳機能は、身体とは違い数年経ってからでもリハビリを開始すれば緩やかな回復が見られるという報告も少なくありません。

まずは、早期発見、早期リハビリテーションを受けていただくことが先決です。

【高次脳機能障害の評価とは?】

神経心理学検査は、以下のようなものがあります。
●知能テスト

  • 知識、見当識、記憶、計算などのテストで、以下のようなものがあります。
    1. WAIS-Ⅲ
    2. MMSE
    3. 長谷川式知識評価スケール
    4. RCPM

●言語機能に関する検査

  • 「聞く」「話す」(音声に関わる機能)、「読む」「書く」(文字に関わる機能)に関する検査で、以下のようなものがあります。
    1. SLTA
    2. WAB失語症検査
    3. トークンテスト

●記憶力の検査

  • 記憶力の障害に関する検査で、以下のようなものがあります。
    1. WMS-Ⅲ
    2. 三宅式記銘検査
    3. ベントン視覚記銘検査

●前頭葉機能に関する検査

  • 「行動を計画、立案、実行する」といった遂行機能の障害に関する検査で、以下のようなものです。
    1. WCST
    2. かなひろいテスト

6ヶ月間は、急速な回復が見込めるため評価をしっかり行いリハビリテーションに励む時期です。

6ヶ月経過後にまだ日常生活で支障がある、不安がある場合は医師に相談し、手帳の取得手続きを行なっていただくと良いと思います。

https://pressexpress.jp/koujinoukinousyougai-tetyousinnsei/

高次脳機能障害の手帳申請の仕方は?等級や診断書についてまとめました

高次脳機能障害とは?

「高次脳機能障害」という用語は、脳損傷(のうそんしょう)に起因する認知障害全般(にんちしょうがいぜんぱん)を指し、以下の障害が含まれます。

  • 失語・失行・失認
  • 記憶障害
  • 注意障害
  • 遂行機能障害
  • 社会的行動障害

失語・失行・失認

失語(しつご)

  • 失語症に関しては、こちらの記事で解説しています。

https://pressexpress.jp/shitsugosyounosyurui/

失語症の種類と特徴の覚え方!わかりやすい表を紹介!

失行(しっこう)

  • 指節運動失行(しせつうんどうしっこう)

麻痺がないのに不器用になる症状

例)洋服のボタンをつけられない。

  • 観念運動失行(かんねんうんどうしっこう)

意図的に作業をしようとしたり、真似をしようとするとできなくなる症状。
例)箸を使って、問題なく食べているのに、「どうやって箸を使うのですか?」と聞くと、どうしたらいいか途端に分からなくなってしまう。

  • 観念失行(かんねんしっこう)

行為の順番や、道具の使用方法などが分からなくなる症状。
例)お茶を入れるのに、茶葉を入れて出してと中々お茶を入れられない。

失認(しつにん)

  • 視覚失認(しかくしつにん)

目で見ている物が何なのか分からない。
目で見ている物が何かは分かるが、それが何に使うものか、何と言う名前なのか、関連付けることが出来ない。
例)机の上の「はさみ」を見ても、何が置いてあるのか全く分からない。
にもかかわらず、形を書き写すことは出来る。

  • 身体失認(しんたいしつにん)

自分の身体が認識出来ない状態。麻痺がないにもかかわらず、認識出来ていない側の身体を使わない、身体部位の場所が分からなくなるといった症状を呈します。
例)化粧をしたときに、認識していない側の口紅を塗らないまま作業を終えてしまう。

記憶障害

  • 前向性健忘(ぜんこうせいけんぼう)

発症後に新たに経験したことが思い出せなくなる状態。
例)事故後、自分や家族の名前は問題なく思い出せるが、新しく出会った医師や看護師の名前が覚えられない。

  • 逆行性健忘(ぎゃっこうせいけんぼう)

発症前に経験したことが思い出せなくなった状態。
例)事故後、新しく出会った医師や看護師の名前は問題なく覚えられるが、自分や家族の名前を思い出せない。
情報の保持時間による障害の分類

  • 短期記憶障害(たんききおくしょうがい)

読書や計算などの時に使われる、短い時間の記憶が障害される。
例)ついさっき食事したことを忘れて、「ごはんまだ?」と聞いてしまう。

  • 長期記憶障害(ちょうききおくしょうがい)

今まで経験したことを永続的に保持される能力。
例)自転車の乗り方が分からなくなる。
会社から自宅までといった、通い慣れた道順が分からなくなる。

注意障害

  • 集中力の低下

覚醒度低下表情が乏しくなったり、『ボーっとした』感じになったりして、全ての面で反応が遅くなる。
例)病気になってから自分からは何もしなくなってしまった。

  • 持続力低下

別の刺激(周りの声や音)に注意が向いてしまい、本来注意を向けるべき対象に集中して取り組めなくなる症状。
例)周囲の事が気になって、仕事をしていても度々中断してしまう。

  • 転導性低下(てんどうせいちゅういりょくていか)

持続力低下とは逆に、周りの状況に気がつかないために、行動へうまく移れなくなる症状。
例)テレビを見ていたときに電話が鳴ったが、気がつかなかった。

  • 転換性注意力低下(てんかんせいちゅういりょくていか)

その時の状況に応じた注意の変換がうまくできないために、同じような行動を繰り返したり同じことを何度も言ってしまう症状。
例)探し物をするときに、同じところのみ探し続けてしまう。

遂行機能障害

1.目標の設定の障害未来における目標を明確に設定できない。
例)何かを始めるときに「○○をしたら、□□になる…」といった予測を立てずに、手当たり次第に物事を進めてしまう。

2.計画立案の障害目標を達成させる為の計画の段取りを立てられない。
例)何かを始めるときに「○月□日までにこれをして…」といったように、具体的な締め切り設定できない。

3.計画の実行の障害正しい手順で計画を開始・持続できない。
例)「○○をしてから□□をして、最後に△△をする…」と段取りを組んでいるのに、いざ始めると気が向いた順で作業を行ってしまう。

4.効果的・効率的な行動の障害目標に近づくように、自己の行動を評価し、必要に応じて修正できない。
例)「予定していた○○さんが休んでしまった…」と、急な予定変更がおこったときに、その状況に応じた計画の変更が出来ない。

社会的行動障害

1.意欲、発動性の低下何事にも意欲が持てず、一日中ボーっとして過ごす。

2.情動コントロールの障害イライラした気分が徐々にエスカレートし、怒りを爆発させてしまう。また、突然大声を出したり、暴力、性的行為などの反社会的行為をおこす。

3.対人関係の障害親密すぎる発言や行動、急な話題転換に対応ができない、抽象的な指示に対する理解が困難となる。

4.依存的行動人格機能が低下し退行を示す。

5.固執習慣的な行動であれば問題ないが、新たな問題には対応ができず、その際に1つのことがらに固執してしまう。

引用・参考サイト:松山リハビリテーション病院

【高次脳機能障害と間違われやすい障害】

  • せん妄

軽い意識障害、幻覚、落ち着きがなくなるなどの症状を言います。落ち着かずに歩き回ったり、大声で泣いたり、怒鳴ったりします。多くは、昼夜逆転などの生活リズムの乱れなどで起こりますが、治療すれば元に戻ることが特徴です。

  • 認知症

何らかの病気や障害によって脳の働きが悪くなり、もの忘れや日常生活や仕事に支障をきたすようになった状態のことをいいます。

最近は、生活や仕事に支障をきたさないような軽い症状でも軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)など早期診断がなされるようになりました。

認知症によるもの忘れは脳の神経細胞が壊れてしまうことなどによるもので、老化とは異なります。認知症の場合、進行すると、体験したことをまるごと忘れてしまい、ヒントがあっても思い出すことができなくなります。

高次脳機能障害の原因傷病

  • 8割は脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、モヤモヤ病などの脳血管疾患)
  • 1割が交通事故などの頭部外傷とされています。
  • 残りの1割は、脳腫瘍、脳炎、エイズ脳炎などの感染症、正常圧水頭症、全身性エリテマトーデス、神経ベーチェット病などの自己免疫疾患、アルコールや薬物などによる中毒、多発性硬化症などさまざまな病気により引き起こされます。

高次脳機能障害者数:平成13年(2001年)度から5年間行われた高次脳機能障害支援モデル事業において、すべての年齢層をあわせて全国で約27万人、そのうち18歳以上65歳未満は約7万人と推定されています。

 

高次脳機能障害の回復過程をわかりやすく解説!

発症から高次脳機能障害に気づくまで…

頭部外傷や脳卒中などによって、重い意識障害に陥るような状態

治療の後、意識が戻り、歩行や食事ができるようになる

外見上は回復したように思えるのに、

  • 「会話がうまくかみ合わない」
  • 「段取りをつけて物事を行うことができない」
  • 「人が変わった」
  • 「怠け者になった」

※高次脳機能障害が日常生活に影響している状態です。

高次脳機能障害の症状は、回復しますか?

A:高次脳機能障害にも様々な症状があり、その内容に合わせた適切な訓練(リハビリテーション)を受けることで治療効果がみられ、症状が回復する場合があります。

しかし、すべての方に明らかな効果があるとは限りません。また、中には高次脳機能障害の原因となる脳の損傷の発症(受傷)から長い年月を経てもよくなる方がいますが、一般的には発症(受傷)から年数の経った場合ではよくなる程度に限界があると考えられ、早期の訓練が望まれます。参考:京都市地域リハビリテーション推進センター,

A:純粋な医学的見地からは、個人差はあるもののある程度まで回復するが、100%の回復は無理だとお答えします。

ただし、ここでいう「回復」とは、「知能検査や記憶テストなどによる点数での評価」のことです。高次脳機能障害は、日常生活または社会生活を送るうえで困難が生じている状態です。

「日常生活に困らないレベルに達した」、あるいは「困らないように周囲の人の配慮や環境が整えられるようになった」のならば、「高次脳機能障害はなくなった(=よくなった)」ということになります。

千葉県千葉リハビリテーションセンター

高次脳機能障害の治療の流れ

病院で医学的リハビリテーションが6ヵ月程度実施される

(急性期リハビリテーション・回復期リハビリテーション)

施設などでの生活訓練プログラムを行う

職業訓練プログラムを行う

合わせて約1年程度のリハビリテーションを行います。

回復過程:目標を段階的に決めていく

トイレ動作の自立、歩行の自立など(高次脳機能障害は、本人が自覚していないことも多く、訓練を実施することについて本人の納得が得られにくいことがあります。)

  • スケジュールを立ててそれに基づいて行動できる
  • 小遣い帳をつけて金銭管理ができる
  • 料理の献立を考えて必要なものを揃えることができる
  • パソコンの操作ができる、など

実生活に即した目標で、能力に見合ったものを本人、家族等と相談して設定することになります。

※回復過程には、個人差がある!検査評価に基づいて、日常生活、職場、学校などでの問題点を明らかにし、この問題点を本人に理解してもらうことが大切です。

【リハビリテーションの種類は3種類】

  1. 障害されている能力自体を訓練で向上させていく「機能訓練」
  2. 保たれている能力を有効に活用する技術を身につける、「代償手段獲得訓練(だいしょううしゅだんかくとくんれん)」
  3. 周囲の人との関わり方や、ご自宅の環境を変えることで生活しやすい状況を提供する、「環境への働きかけ」

復職・復学へのアプローチについて

  1. 障害福祉サービス
     障害の種別にかかわらず、地域生活に必要なサービスがあります。サービスの内容は、下記のようなものがあります。各市町村の福祉担当窓口へお問い合わせください。

    • 自立訓練:自立した日常生活ができるよう生活能力向上のために必要な訓練の提供
    • 就労移行支援:一般企業等へ就労を希望する人に、就労に必要な知識や能力向上のための訓練の提供
    • 就労継続支援:一般企業等で訓練が困難な人に働く場を提供するとともに知識や能力向上のための訓練を提供
    • グループホーム:夜間休日、共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行う。
    • 居宅介護:ホームヘルプサービス
    • 短期入所:ショートステイ
  2. 自立支援医療
    精神障害者(高次脳機能障害で精神通院医療を必要とされる方を含む)の通院の医療費を軽減します。
  3. 障害年金
    条件をみたしていれば、高次脳機能障害も障害年金の対象となります。記憶障害、感情障害などがある場合には、「精神の障害用」の診断書が必要になります。
  4. その他の利用できる制度
    介護保険、失業保険、自動車事故で高次脳機能障害になった場合には、自動車保険があります。

最終段階!地域で生活される高次脳機能障害の方に対して

若年者では高次脳機能障害を発症する主な原因として、交通事故や業務中での事故が多いため、復学・復職を含めた社会復帰への訓練・支援が重要となります。残存能力と障害された能力の双方を考慮し、できること・できないことに対する工夫や代償方法のアドバイス、職場・学校など復帰先での環境・人員配置等を含めた情報交換を行います。

急性期・回復期のリハビリテーションを経て、地域で生活されている当事者の方に対しては、日常・社会生活などの生活上で生じてくる問題点に対して、個別の相談や対応方法の検討を行います。また、重要な支援者であるご家族に対しても、当事者の方への関わり方やサービス利用の説明などの支援・指導を受けます。

まとめ

今回は、高次脳機能障害の回復期間や回復過程をわかりやすく解説しました。

高次脳機能とはそもそもどんなものなのか?どんなことに困ってしまうのか?

どうすれば良くなるのか?疑問が”見えない障害”だからこそ、想像しにくいと思います。

先の見えないリハビリは、心が折れやすいです。高次脳機能障害の回復期間や回復過程を学んで、見通しを立ててリハビリや日々の関わりをしていきましょう。

高次脳機能障害の手帳申請の仕方は?等級や診断書についてまとめました

https://pressexpress.jp/rakutenkeizaiken/